いつものごとく、ネットを徘徊していたらワシントン・ポストの記者が書いた記事「Five tech industry predictions for 2012」を見つけました。
この記事が挙げている5つ予想を引用すると、以下のような感じでしょうか(雑な訳でアレですが…)
- Social media will lose its sizzle.
- The bubble will pop for the current crop of tech IPOs.
- An explosion of the tablet market driven by sub-$100 tablets.
- Voice recognition goes mainstream.
- “Cloudburst” shakes the tech industry.
-ソーシャルメディアの利用が停滞していくだろう。
-tech系のIPOバブルがはじけるだろう。
-$100以下のタブレット製品によって、タブレット市場が旧成長するだろう。
-音声認識が主流になっていくだろう。
-“Cloudburst”がITギョーカイを震撼させるだろう
えーと、”Cloudburst”ってのは、クラウドを使ったサービスの利用が加速することって感じの意味で使われているっぽいと。まー、ざっと見た感じではあんまりアグレッシブな予想ではなく、どっちかというとそんなに大外ししない代わりに、斬新さに欠けるような予想のような気がします。
果たして、日本ではどうなるんだろうなぁと考えてみることにしましょうか。
ソーシャルメディアの利用が停滞するというのはそんなに違和感はないんですが、より細かく見てみると、多種多様なソーシャルメディアがローンチされる割には使われないといった見え方になりそうな気がします。確かに、FacebookやTwitterなどの先行者がつかんだユーザーたちのソーシャルメディア疲れは懸念されるものの、人々がソーシャルメディアに費やす時間が大きく減るかというとそうではないような気がします。スマートフォンの普及によって、ソーシャルメディアへの距離感が近くなった(コストが下がった)というのが1つ。それとは逆に、スマートフォンを使って何かしたいという欲求が発生しているなかで、ゲームやソーシャルメディアなど、スマートフォンでできることのバリエーションは実はそんなに大きくないことから、結果的にソーシャルメディアに接触しているといった使い方もあるんじゃないかということがもう1つ。また、(人によるかもしれませんが)TwitterやFacebookがこれまでのメディアでは流通しづらかったような情報(友達のリアルタイムな近況など)を流通させていることから、明確なメリットを感じている人が少なくないのではないか、ということもあるのではないでしょうか。
Tech系IPOのバブルというのは、LinkedInとか、ZyngaのIPOのことを指しているわけですが、特に、いずれもIPO直後の価格が思惑とは裏腹に下降を続けていることを指しているようです。ま、なんとなくGrouponからの流れがあったような気もしますし、FacebookがIPOするとかしないとかって話がありますが、FacebookでもLinkedInやZyngaと同じことが起こるのか、ということも少し疑問です。個別銘柄の事例から傾向を推し量るのは少し難しいのではないかという印象です。
もとい。日本でもIPOの流れは少しありそう(現にKLabのIPOとか)ですが、例えば、ウノウがZyngaに買収されたような、大きく成長したTech系の事業会社によるStartupの買収が増えてきそうな気がします。例えば、SalesForceも国内の事業会社への投資を増やしていそうですし、同じような流れが他の企業(例えば、楽天とか)起きないとも限らない。そういう意味では、IPOバブルになる前に、さまざまなExitでStartUpが買収されていくのではないかという気がします。むしろ、有望なStartupを事業会社、VCなどで奪い合うような、そんな状況が起こる、とか。
次にタブレットマーケットですが、DoCoMoショップなどの端末の売れ行きを見ていると、まだスマートフォンが中心で、Androidタブレットなどは叩き売られているのが現状のようです。逆に言えば、Androidタブレット端末はキャリアとバンドルされた形の販売形式がメインで、WiFiのiPadのような販売形式が見られないのが現状、と。確かに、Asusなどのタブレットの一部は、量販店に並んでいるものの、やはり売れている印象はありません。
ネタ元の記事の$100以下のタブレットというのは、おそらくは中国や台湾のメーカーがAndroidを搭載した安いタブレットを投入してくることを指している(インド製の$35タブレットは現実味を帯びているようですが)のでしょう。むしろ、$100あたりのタブレットは、これまでも投入されてはいたのですが、静電パネルではなく、感圧式のパネルだったり、バッテリーの持ちがひどかったり…と、実際の利用にあたってはかなり厳しい品質で、まともに使えないものだったのが、少しは洗練されてくるということでしょう。確かに、MITメディアラボの創設者のニコラス・ネグロポンテ氏が教育用の$100以下のPC(OLPC)をなんとかつくろうとされていたことを思い出せば、(1)そこそこのスペックで(2)大量に生産することでコストを下げて(3)利用にあたって安価な、もしくは無料なソフトウェアを搭載した端末は成立しうるのではないかという気がします。教育用の他に、家庭での利用シーンを作れるか、そのシーンに応じたソフトウェアを無料に近い価格で用意できるかが$100以下タブレットのキモなのかもしれません。
そして、音声認識。日本語では厳しいのではないかというか、既にGoogleが音声検索用のアプリを無料で提供していますが、まともに使っている人たちを見かけないことから、2012年も日本では音声検索については厳しいのではないかという印象を持っています。スマートフォンにおいても日本語の入力はかなりの問題を抱えているのは確かですが、だからといって音声にぱたっと倒れるほど、問題はシンプルではないように思います。
最後に、クラウドの利用ですが、正直なところ、ITギョーカイの悪習といってもいいのですが、「クラウド」なるものをしっかり定義することなく、既存のものから新しいものまで、ごった煮にしたあげく、なんでも「クラウド」とラベルを貼ってしまうでしょう。例えば、これまでASPサービスって売っていたものを、「SaaS」と言い換えたところで、特段大きな違和感があるかというとそんなこともない。そうなってくると、否が応でも「クラウド」の利用は進むことになるでしょう。「SaaS」くらいになるともうクラウドで動いているかどうかはあんまり関係ない世界なんだろうと思いますが、いわゆる「IaaS」のあたりのクラウドサービスは、これまでの経験の差がモロに反映されてきそうな気がします。新興「IaaS」がいろんなトラブルを経験する一方で、AWSのような老舗サービスは(既に通った道なので)似たようなトラブルには見舞われない、といったような形で差別化が進むような気がします。新興「IaaS」などは価格で差別化するしかなく、規模が小さい「IaaS」ベンダーなどは価格によっては耐えきれなくなったり刷るのかもしれません。また、同時に、新興「IaaS」ベンダーなどはAWSのような老舗サービスをリファレンスモデルにして「似たようなサービス」を作ることによって、スイッチングコストを下げるような戦略も成立しそうな気がします。
…雑に書きなぐったエントリーですが、一応、以上です(汗)
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